まずは、読者の職種を「経営者・役員」に限定し、基準月を今年1月、対象月を今年4月とした調査結果を見てみましょう(図1)。グラフの横軸には「優先度」、縦軸は「注目度の変化」をとって業種別の違いを示しました。
図1 経営者・役員における5Gの「優先度vs.注目度」の変化 2018年1月に対する4月の変化度を示した。
(出所:日経BP総研「Innovation Research」)
図1を見ると、「電気、電子機器」業界の優先度が、他の業界に比べて際立って高くなっています。また、「通信サービス」といった5Gに直結する業界や、「情報処理、SI、ソフトウエア」といった5Gによるデータ活用ビジネスの拡大が見込める業界でも、優先度が高くなっています。そんななかで、「エネルギー」業界の優先度が高かったことも注目です。その理由について考えられることの1つは、米国の調査会社が将来の電力の事業取引モデルにおいて、5Gに言及したことです*2。キーワードを「ブロックチェーン」として分析したときも「エネルギー」業界は大きな伸びを見せていました。「エネルギー」業界の経営者・役員は、新しい技術に対して高い関心を示す傾向にあるのかもしれません。
次に、注目度を見てみましょう。注目度は、その業界で5Gが「浸透し始めているか」の目安にもなるわけですが、顕著な伸びが見えたのは「農林水産・鉱業」業界でした*3。一次産業においては、5Gを使ったサービス(例えば遠隔監視やIoTなどか)を検討している可能性があると思われます。なお、注目度の変化が±5以内の場合は、誤差の範囲とお考えください。逆に、5や10を超えてくると顕著な変化といえるため、「農林水産・鉱業」は特に注目度の変化が大きいといえます。
一方で「機械、重電」「素材」「自動車、輸送機器」業界では、優先度こそ高いものの、注目度には大きな変化がありません。これらの業界では機器での5G利用が欠かせなくなることから、今後の伸びに向けた経営層・役員への啓蒙や対策が欲しいと感じます。逆に言えば、先ほど挙げた「農林水産・鉱業」業界の経営者層は5Gに注目しているわけですから、そういったところからもプロモーションのやり方が読み取れるわけです。
その他の業界は優先度が低く、注目度の変化も小さくなっています。これはつまり、そういった業界では一部の関係者のみが5Gを重視している、あるいは関心の盛り上がりが弱いということ。5Gの活用範囲はとても広いので、そういった状況を踏まえると啓蒙の余地は大きいと推測できます。
*2 2018年2月、米国の調査会社が「分散エネルギーによる発電モデル」の実現により、電力の事業取引モデルに変革が起こる可能性があると発表、このなかで5Gの果たす役割にも言及している。(米国調査会社によるデジタルグリッドの記事)
*3 農業分野における5G活用の例として、英国の農村地帯のデジタルデバイド(情報格差)を5G技術で改善するプロジェクト「5G RuralFirst」がある。英国政府によるデジタル化戦略の一環として行われたものだ。(5G RuralFirstに関する記事)