ドコモ5Gオープンパートナープログラム

記事閲読から5Gの浸透度を読み解く
「農業」「建設」など
先駆的業界に注目

日経BP社が会員向けにWEB上で提供している記事の閲覧状況を、会員属性を用いて分析することで様々なトレンドを読み解くことができます。今回は「5G」の関連記事の閲覧状況を分析することで、どのような業種で、どれくらい浸透しているのかを分析しました。
5Gなど技術系テーマ/キーワードについては一般的に、研究・開発部門が注目し始め、経営層が注目した時点で投資時期に移ったと判断できます。「5Gの浸透度」を図るべく、分析した内容をご紹介します。

株式会社 日経BP
技術メディア局長補佐

大久保聡氏

大久保さんが取り組んでいる会員向け情報提供サービス「Innovation Research」では、特定のキーワードに関する記事の閲読傾向から、業種や役職ごとの浸透度を読み解くことができると聞いています。「5G」については、どのような傾向が見えるでしょうか。

全体を通して、5Gを推進する立場にある「電気・電子機器」「通信サービス」「情報処理、SI、ソフトウエア」業界において、5Gの優先度*1が高い傾向がはっきりしているものの、5Gのユーザーとなる多くの業界ではそれほどでもないことが分かります。

以上は大きな傾向ですが、より小さな傾向もつかめます。優先度が低い業種群の中でも、「農林水産・鉱業」では経営者の注目度*1が高まっていることがうかがえます。

5Gのようにキーワードが技術的なものだった場合、その技術を研究・開発したり関連機器を製造したりする業種ほど優先度は高くなり、その技術を活用する実用化フェーズに移行するにしたがって数値は低下していきます。逆に言えば、その業種の数値が低下しないうちは、実用化フェーズではないと言えます。一方で、キーワードの技術を活用する業種(各種サービス関連など)ほど当初の優先度は低くなりますが、実用化フェーズに移行するにしたがって上昇していきます。この動きは「AI」をキーワードにして分析したときにもみられました。「ブロックチェーン」をキーワードにした際も同様で、現在は「AI」の変化をなぞるように推移しています。

*1 ここで言う「優先度」は、読者の属性分布に対する対象記事の閲覧読者の比率。全体の分布に対して閲覧読者の分布が多い場合、当該キーワードの優先度が高いと言える。仮に属性Aの読者数が全体のうち12%で、対象記事を読んだ割合が18%であれば、優先度は1.5になる。「注目度」は、優先度を経時比較したもの。今回、Innovation Researchで対象とした記事は、日経BPのオンラインメディア「日経ビジネスオンライン」と「日経 xTECH(クロステック)」。

5Gもまずは提供側の関心が高まっているということですから、今後、過去のAIなどと同じように活用企業側の関心が高まるかどうかに注目したいですね。調査の詳細について教えていただけるでしょうか。

まずは、読者の職種を「経営者・役員」に限定し、基準月を今年1月、対象月を今年4月とした調査結果を見てみましょう(図1)。グラフの横軸には「優先度」、縦軸は「注目度の変化」をとって業種別の違いを示しました。

図1 経営者・役員における5Gの「優先度vs.注目度」の変化 2018年1月に対する4月の変化度を示した。
(出所:日経BP総研「Innovation Research」)

図1を見ると、「電気、電子機器」業界の優先度が、他の業界に比べて際立って高くなっています。また、「通信サービス」といった5Gに直結する業界や、「情報処理、SI、ソフトウエア」といった5Gによるデータ活用ビジネスの拡大が見込める業界でも、優先度が高くなっています。そんななかで、「エネルギー」業界の優先度が高かったことも注目です。その理由について考えられることの1つは、米国の調査会社が将来の電力の事業取引モデルにおいて、5Gに言及したことです*2。キーワードを「ブロックチェーン」として分析したときも「エネルギー」業界は大きな伸びを見せていました。「エネルギー」業界の経営者・役員は、新しい技術に対して高い関心を示す傾向にあるのかもしれません。

次に、注目度を見てみましょう。注目度は、その業界で5Gが「浸透し始めているか」の目安にもなるわけですが、顕著な伸びが見えたのは「農林水産・鉱業」業界でした*3。一次産業においては、5Gを使ったサービス(例えば遠隔監視やIoTなどか)を検討している可能性があると思われます。なお、注目度の変化が±5以内の場合は、誤差の範囲とお考えください。逆に、5や10を超えてくると顕著な変化といえるため、「農林水産・鉱業」は特に注目度の変化が大きいといえます。

一方で「機械、重電」「素材」「自動車、輸送機器」業界では、優先度こそ高いものの、注目度には大きな変化がありません。これらの業界では機器での5G利用が欠かせなくなることから、今後の伸びに向けた経営層・役員への啓蒙や対策が欲しいと感じます。逆に言えば、先ほど挙げた「農林水産・鉱業」業界の経営者層は5Gに注目しているわけですから、そういったところからもプロモーションのやり方が読み取れるわけです。

その他の業界は優先度が低く、注目度の変化も小さくなっています。これはつまり、そういった業界では一部の関係者のみが5Gを重視している、あるいは関心の盛り上がりが弱いということ。5Gの活用範囲はとても広いので、そういった状況を踏まえると啓蒙の余地は大きいと推測できます。

*2 2018年2月、米国の調査会社が「分散エネルギーによる発電モデル」の実現により、電力の事業取引モデルに変革が起こる可能性があると発表、このなかで5Gの果たす役割にも言及している。(米国調査会社によるデジタルグリッドの記事

*3 農業分野における5G活用の例として、英国の農村地帯のデジタルデバイド(情報格差)を5G技術で改善するプロジェクト「5G RuralFirst」がある。英国政府によるデジタル化戦略の一環として行われたものだ。(5G RuralFirstに関する記事

経営者の傾向についてはよく分かりました。現時点での5Gは、多くのユーザー企業において経営判断の対象ではないと言えるかもしれませんね。その他の職種では違う傾向が見られますか。

次に、職種を「企画・調査・マーケティング」に限定した調査結果を見てみましょう(図2)。この職種を選んだ理由は、これまでの調査を見てきたなかで、注目度の変化はまず最新技術(今回は5G)の開発者が最初に上昇し、そこから実際の使い手が上がる前に、先行的にその技術について調査する「企画・調査・マーケティング」で変化が見えてくる傾向にあるからです。そういった意味では、「企画・調査・マーケティング」は技術をサービス側に橋渡しする属性といえます。

図2 企画・調査・マーケティング担当者における5Gの「優先度vs.注目度」の変化 2018年1月に対する4月の変化度を示した。
(出所:日経BP総研「Innovation Research」)

図2を見てみると、先ほどの図1と同様に「電気、電子機器」業界の優先度が最も高く、5Gに強く関わる「通信サービス」「自動車、輸送機器」「機械、重電」といった業界でも優先度は高い傾向にあります。

これは納得のいく結果ですが、注目すべきは「素材」業界です。優先度が「電気、電子機器」業界に次ぐ「2」と非常に高くなっています。これについては、5G市場がサプライヤーに対して潜在的にどこまで大きいのかを調査している印象で、5Gを実装していくなかで、「素材」業界の人々がどれだけ影響があるのかを見極めているのかなと分析します。そこを見極めつつ、製品化(技術・設計)に力を入れる可能性があるとみています。

「素材」「自動車、輸送機器」「機械、重電」については、優先度こそ高くても注目度の変化が若干低下傾向なのは要注意です。誤差の範囲ではありますが、盛り上がりが沈静化している印象もあります。

注目度については特徴的な結果が見えますか。

注目度については、「建設」業界で10ポイント近い顕著な高まりがみられます。最近、弊社メディアで取り上げる建設系の記事には「遠隔操作」「AI」「無人化」といったキーワードがよく出てきており、「建設」業界は人材不足解消を目的に建機の自動化を加速させている印象です。5Gを活用したクリアなカメラ映像で建機を遠隔操作する要望もあるようなので、そういった動きから「建設」業界では5Gに対して関心が高いと推測できます*4

一方で、サービスに係るその他の業界では、注目度の高まりはまだ弱い印象です。私は、5Gのポテンシャルは非常に高いと感じているので、「5Gによる新サービスで生活や社会どう変わるのか」を積極的にプロモーションし、5Gを利用するサービス関連プレーヤーの注目度を高めていくべきだと考えます。

*4 建設分野では、コマツとNTTドコモ、SAPジャパン、オプティムの4社が、土木工事の全行程の可視化と生産性向上のためのIoT基盤「LANDLOG」を構築・運用する「ランドログ」を設立した。LANDLOGにおいて、5Gは重要な技術要素となる。(ランドログに関する記事

「経営者・役員」「企画・調査・マーケティング」の結果を教えていただきました。5Gの推進側となる「生産・製造」「技術・設計」「研究・開発」については、何か特徴的な結果がみられますか。

職種を「生産・製造」に限定した調査結果が図3です。これまでの図と比べてプロットされている業種が少ないのは、母数の小さい業種を省いたからです。

図3 生産・製造担当者における5Gの「優先度vs.注目度」の変化 2018年1月に対する4月の変化度を示した。
(出所:日経BP総研「Innovation Research」)

これまでと同様に、図3でも「電気、電子機器」業界の優先度が高くなっています。実際のモノづくりはまさにこの業界なので、5Gの実用化が間近に迫っていることを反映しているとみられます。一方で、5Gシステムを搭載するとみられる「自動車、輸送機器」「機械、重電」の業界では、優先度があまり変化していません。この業界では、機器への5Gシステム搭載がまだ実用化フェーズに入っていないと考えられそうです。

次は、職種を「技術・設計」に限定した調査結果(図4)を見てみましょう。ここでは「通信サービス」業界の優先度が最も高くなっていますが、これは機器設計などが入ってくるので納得の結果ですし、この業界がまさに中心にいるのかなという印象です。一方で、意外だったのは「卸売・小売業・商業(商社含む)」業界でしょう。こちらも優先度と注目度の変化がプラスでしたが、技術商社における5G対応事業の重要度が高まっていると考えられます。

図4 技術・設計担当者における5Gの「優先度vs.注目度」の変化 2018年1月に対する4月の変化度を示した。
(出所:日経BP総研「Innovation Research」)

「電気、電子機器」業界の優先度も高く、5G関連機器の設計における重要性の高さがうかがえます。逆に、5Gシステムを活用するであろう「自動車、輸送機器」「機械、重電」業界では、優先度が高くなく伸びもみられません。これは5Gへの関心がまだ一部にとどまっているからと思われますが、良く言えばこれから先に伸びる余地があるのかなと考えます。また、「情報処理、SI、ソフトウエア」は優先度こそ低いですが、注目度は上昇しつつあります。5G搭載機器の設計に向けて、注目度が一部関係者から業界全体へ広まりつつあるといえそうです。

「電気、電子機器」業界における重要度が高いという大きな傾向のなかで、それ以外では局所的に特徴的な動きがみられるようですね。今後注目したいと思います。最後は「研究・開発」ですね。

調査結果を紹介しましょう(図5)。図5では、「通信サービス」「電気、電子機器」「自動車、輸送機器」「機械、重電」などの注目度の変化は、どれもそれほど大きくありません。これは全体的に見ても小さく、ほぼ固定化しているイメージでした。

図5 研究・開発担当者における5Gの「優先度vs.注目度」の変化 2018年1月に対する4月の変化度を示した。
(出所:日経BP総研「Innovation Research」)

5Gに関連した研究に携わる企業や技術者は、広範囲の業界に広がるというよりも、特定の業界や人材で進められている印象があります。「研究・開発」だからといって一気に広がるようなことはなく、そういった傾向がここからも推測できます。ただし、ちょっと気になったのは、「エネルギー」「情報処理、SI、ソフトウエア」業界です。この2つについては注目度の高まりが見られるので、今後も注目していきたいところです。

ここまで、「経営者・役員」「企画・調査・マーケティング」「生産・製造」「技術・設計」「研究・開発」の5職種について解説いただきました。全体を総括すると、5Gの浸透度についてはどのようなことが言えるでしょうか。

「電気、電子機器」「通信サービス」といった5G対応機器やサービスに直接関係する業界の優先度が高い一方で、5Gを活用するサービスに関わる業界では注目度の変化がおおむね小さく、優先度もあまり変動していないことが分かりました。これは、それぞれの業界における先駆者的なビジネスパーソンのみが、5Gに高い関心を持っている状況にあると考えられます。つまり、特定業界を除いて5Gが産業や社会に与える影響について関心が薄く、認知度が高まっていないという印象です。

逆に言えば、これはまだまだ可能性があるということ。そもそも、5Gの恩恵を受ける業界は多岐にわたり、いずれの業界で優先度が高くてもおかしくはありません。ただし、どの業界においても、認知度の向上が容易ではないのも事実です。そこで今回の分析を踏まえ、例えばまずは経営層における「農林水産、鉱業」、企画における「建設」など、5Gの可能性を先駆的に感じ始めた業界に向けた啓蒙から着手してみてはどうでしょうか。この啓蒙によって特定業界での認知度を高め、その業界での認知度の高まりを他業界での啓蒙に生かすといった策が打てると私は考えます。

既に5Gビジネスに着手した企業にとって今回の分析結果は、顧客や協業先の目星をつけるときに活用できるでしょう。5Gの恩恵を受ける業界は幅広いため、5G関連のベンダーにとっては営業や協業の相手として「どの業界を優先すべきか」が悩みどころではないでしょうか。5Gへの優先度や注目度の高さを考慮して声を掛ける業界に優先順位をつければ、営業や事業を効率的に進められると私は考えます。

5G関連ベンダーの中には、「農林水産、鉱業」や「建設」など5Gの可能性を先駆的に感じ始めた業界との関わりが薄い場合もあるでしょう。その場合、先駆的な業界の動向を注視し、情報を収集するなど、積極的に調査されることをお勧めします。いずれ自社との関係が深い業界で5Gの重要度が上がってきたとき、調査で得た知見が生かせるはずです。

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