ドコモ5Gオープンパートナープログラム

衝撃的だったPerfumeの「5Gライブ」
異業種連携の相乗効果に期待します!

これから数年の間に、通信と放送の規格は、世代が1つ進みます。通信が4Gから5Gへと進み大容量・リアルタイムのコミュニケーションが可能になる一方で、放送は4K・8K放送が始まり、より高精細な映像を楽しめるようになります。
5Gと4K・8K時代のメディアやエンターテインメントはどのようなものになるでしょうか。ICT業界でキャリアを積んだ後、テレビやスマホを連携したコンテンツの企画を推進したり海外のメディア/エンタメ関連のイベントに参加したりするなど、国内外の動向に詳しい西村氏にメディア/エンタメの将来像をうかがいました。

株式会社HEART CATCH
代表取締役

西村 真里子氏

西村さんは、テクノロジーとデザイン、マーケティングの融合領域で幅広く活動されています。これまでの活動を振り返ると、「メディア&エンタメとICTの融合」にはどのようなものがありましたか。

国際基督教大学(ICU)在学中、劇団で舞台照明を手掛けていたときにパソコンソフトを使って、ステージのライティングをシミュレーションしたのがきっかけです。その経験から、パソコンやインターネットの仕組みに興味を持って日本IBMに就職、その後、転職先のアドビシステムズではFlashテクノロジーを利用したインタラクティブ・コンテンツや動画ストリーミング、さらに前職のバスキュールではさまざまなテレビ番組のコンテンツを手掛け、多くのメディアとつながる機会を得ました。

その中で、メディアとICTを上手く融合できたと感じた、思い出深いものはありますか。

2010年前後は、スマートテレビやソーシャルテレビ*1が出始めると同時に、インターネットの広告費がどんどん増加するなど、ハードウエアとしてもビジネスとしても、スマートフォンとテレビをつなげる動きが、起こっていました。テレビ局側も「スマホとつながることで、自分たちのコンテンツの幅をもっと広げられる」と思ったようです。そういった時期でしたから、バスキュールで手掛けた、テレビとスマホをつなげる実験的コンテンツに関われたことはとても貴重な体験でした。

中でも象徴的だったのは、世界的な広告・コミュニケーション関連の祭典「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」で2014年の金賞を受賞した、テレビ東京の視聴者参加型番組「Bloody Tube」です*2

スマホとテレビの連動と言うと、それまでは番組の一部やスポットCMなどで何となく絡んでいる程度でしたが、Bloody Tubeは「スマホからの参加を前提とした番組」であり、衝撃的でした。テレビ番組としても、片岡愛之助さんや壇蜜さんといった有名人をしっかり起用したうえで、視聴者がスマホ経由で参加しないと、そもそも番組自体が成り立たないというのは、当時は画期的だったと思います。

Bloody Tubeは、カンヌで受賞しただけでなく、「テレビ番組は、視聴者を参加させることで、もっと面白くなる」という、新しい認識を生み出すきっかけにもなりました。

*1 スマートテレビとは、インターネット接続されたテレビ、ソーシャルテレビは、ソーシャルメディアとの連携を強く意識したテレビの視聴形態を指す

*2 Bloody Tubeは、プロジェクション・マッピングによる投影で人体をレースコースに見立て、スマホ経由でレースに参加した視聴者が「体内の移動」を競う番組。

今では、視聴者がネット経由で参加するテレビ番組は当たり前のものになりました。

現在は、Bloody Tubeが受賞した当時と少し違って、そのムーブメントが「少し落ち着いてきた」という印象があります。ただ、今後は放送と通信の世代が1つ進むことで新たなコンテンツが生まれる期待があります。4K・8K放送が始まり、通信も5Gになると、リアルタイムのコミュニケーションがリッチになるでしょう。例えば、VR活用はその1つの現われかもしれません。

テレビ業界ならではのVRコンテンツとは、どのようなものでしょうか。

NHKでは、VRで「今までにない報道の伝え方ができるのではないか」と考えているようです。というのは、事件や災害などを報道する場合、これまでは1つの視点でしか映像を流せませんでした。しかし、VRであれば360度の状況すべてを放送することができるため、より鮮明にその場の状況や雰囲気、あるいは事の重大さを伝えらえる可能性があります。「詳細な状況に加えて、事の深刻さを多くの人に伝える」という報道のミッションに照らし合わせれば、VRは非常に使えるツールになり得るというわけです。

日テレは、エンターテインメントコンテンツとしてVRドラマを制作されていました。このドラマでは、周囲を自由に見渡せるVRならではの特徴を生かし、自分で犯人を捜すことが可能です。「視聴者がゲーム感覚でドラマに参加できる」という、新しいコンテンツ作りにチャレンジしています。

動画1 日本テレビのVRドラマ「ゴースト刑事 日照荘殺人事件」予告映像(出所:日本テレビ)

ただ、どちらのコンテンツもまだリアルタイム配信というわけにはいかず、ともにオンデマンドあるいはダウンロードで視聴する形になっています。しかし、そういった問題も、5Gになればリアルタイムでの視聴も可能になるでしょう。特に報道では、今起こっていることがリアルタイムで、しかも臨場感のある360度映像で見られるという意味で、大きな可能性があると感じます。

テレビ以外のコンテンツ、例えばライブなどのエンターテインメント分野では、ICTの活用でどのような変化が起こっているのでしょうか。

最近インパクトを感じたのは、Perfumeが出演する5Gのプロモーションです*3。このプロモーションでは、Perfumeの3名がロンドン、ニューヨーク、東京の3拠点で別々に踊っているのですが、一部区間に5Gを活用したネットワークで各拠点をつなぎ、それぞれの映像をほぼリアルタイムに合成することで、あたかも3人が一緒にパフォーマンスしているかのような映像を作り出しています。場所に制限されずパフォーマンスできるという試みが、5Gによって可能になるというのはとても衝撃的でした。近い将来は、これがきっとスタンダートになるでしょう。

もう1つ興味深く感じたのは、「CES2018」のパナソニックブースで展示された「IMMERSIVE ENTERTAINMENT - ADVANCED AV SOLUTIONS」です。エイベックスと共同開発された、2025年をイメージした未来都市のエンターテインメントライブの映像が見られたのですが、VRやAR(拡張現実感)を活用し、実際のライブを見ながら、目の前にはアーティストのホログラム映像や文字情報を表示させて楽しむというライブ体験を紹介していました。

動画2 CES2018のパナソニックブースの「IMMERSIVE ENTERTAINMENT」(出所:Panasonic Newsroom)

しかもそのライブ映像は、世界中どこからでも、ライブ会場と変わらない臨場感を持った映像と音楽で視聴できるものでした。VRやAR映像は自由な視点を選べるほか、ホログラムの映像は必ずしもオリジナル映像である必要はなく、好みの衣装やキャラクターに変更することも可能です。そこでは未来のライブの楽しみ方が提示されていたわけですが、5Gによってその実現がどんどん近づいていくと思います。

*3 Perfumeによるプロモーションは、NTTドコモによるプロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT」の第1弾企画「VOL.01 距離をなくせ。」として、2017年11月に行われた(関連記事)、YouTube動画

これまでは、ライブ会場へ行くことに大きな価値がありましたが、近い将来は自宅で楽しむ方が、より高い価値を生む可能性もありそうですね。

それはあると思います。実際、テレビ放送が高精細な4K・8K映像だけでなく立体感のある3次元音響にも対応すれば、スポーツイベントや花火などは自宅のテレビで楽しんだ方が、移動の手間や現場の混雑などもなく快適に楽しめるかもしれません。もちろん、リアルな体験の魅力はあり続けますが、選択肢が増えるという意味で大きな可能性を感じます。

その他にも、例えばルーブル美術館の館内を自由に動けるカメラ付きのロボットが導入されれば、開館前の時間や休館日を使って、ロボットで遠隔見学することも可能でしょう。遠隔からドローンを飛ばせるようになれば、ナスカの地上絵やピラミッドなども場所を選ばずに自由な映像で楽しめるようになります。そういったコンテンツであれば、お金を払ってでも見たいという人は必ずいると思います。

 

これまでそういったコンテンツを提供できなかったのは、ひとえにリアルタイムで映像やロボットの操作を送受信できるインフラがなかったからです。5Gによってこれが可能になるのであれば、スポーツのパブリックビューイングの延長にある、魅力的なコンテンツとして提供できるかもしれません。

このほか、5Gによって期待できるエンターテインメントはあるでしょうか。

「ネット上で開催されるスポーツ競技である『eスポーツ』が盛り上がる」という話をよく聞きます*4。私個人としては、リアルな社会のさまざまな問題とゲーミフィケーションを組み合わせると、何か面白いことができるのではないかと考えています。

例えば、最近は海を漂流するプラスチックゴミが世界的な問題となっています。これに対して、UFOキャッチャーのようなイメージで、実際にドローンを飛ばしてプラスチックゴミを拾えるような仕組みを作れば、ユーザーはゲームを楽しむ感覚で社会貢献できるはずです。他にも、環境に大きな被害を与える害虫を駆除したり、錆びついた鉄橋に錆止めを塗ったりするゲームもあるでしょう。波に浮かぶプラスチックゴミや害虫の動きなどリアルタイムに変化する対象物を自宅で確認し、的確に駆除することは5G時代には可能になるので、エンタメ化していくことで社会課題が解決できると良いですよね。

既存のゲームで培ったテクニックが生かせればそれも面白いですし、こういった取り組みであれば企業や政府も協賛しやすいと思います。5Gでそこまで可能性が広がると思うと、本当にワクワクします。

 

*4 日本国内でもeスポーツの人気が高まりつつある。2018年5月4日には、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)がeスポーツ大会「明治生命eJ.LEAGUE」の決勝ラウンドを開催した (関連記事)。

挙げていただいた事例は、メディアやゲームといった、既存の業界の枠を超えた領域ですね。

いろいろな業界の組み合わせで、より面白いものができると感じます。そこで重要となるのが、それぞれが持つ技術やアセットを、上手く組み合わせていくことです。

例えば、テレビ局は面白い映像の撮り方やカメラワークの技術、CMを入れるタイミングなどを熟知しています。仮に、「ゴミ拾い」のような作業をエンタメコンテンツとして配信するには、テレビのプロが不可欠です。映像の素人が作るよりも断然面白いコンテンツが出来上がるでしょう。

 

新しい取り組みに対しては、スタートアップ企業が率先して推進し、大企業やマスメディアは消極的なことが多いのですが、スタートアップ企業だけでは限界があります。さまざまな技術やアセットを持つ大企業やマスメディアがもっと前向きに参画すれば、大きなダイナミズムを生み出すことができるはずです。そういった相乗効果を期待しています。

 

写真1 スタートアップ企業と大企業の相乗効果に期待を寄せる西村氏(撮影:佐藤 哲郎)

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